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INFO:
「次会うのは来年だね。」 別れを惜しむ人々で溢れた改札前、彼は繋がれた二人の手にそうつぶやいた。 年末はお互いの実家に帰るわけだし確かにそうか、そんなことを考えていた私に彼は仰々しく言う。 「今年はありがとうございました。来年もまたよろしくお願いします。」 まるで赤の他人みたいなその挨拶が面白くて、私は笑う。その顔を見て、彼もまた笑う。 私たち以外誰が見ても面白くないそのやり取りにひとしきり笑ったあと、幸せな二人は改札を隔てて別れた。 見えなくなるまで手を振ってくれた彼の残像を両頬に残しながら、電車の待ち列にそっと加わる。 他人行儀な挨拶に笑えてしまうほどそばにいられる奇跡を、プレゼントの赤いマフラーにうずめた口元がなぞった。 のろのろと入ってきた電車の窓に、星のようなイルミネーションが無数に輝く。 来年とそのまた再来年の同じ日を頭の中で何度も描いたその日、彼は私の知らない遠くの街でしたいになって発見された。 新作小説の冒頭です📚 来年度完成予定だよ📚